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DISEASE

網膜・黄斑疾患

加齢黄斑変性/糖尿病網膜症/網膜静脈閉塞症(BRVO・CRVO)/黄斑円孔/黄斑前膜/中心性漿液性脈絡網膜症/網膜裂孔/網膜剥離

早めに受診

「急に見えにくくなった」「黒い点や影が急に増えた」「視野の一部が欠ける」などの症状は、網膜剥離など、早期の診断・治療が必要な病気のサインの可能性があります。

網膜・黄斑疾患とは

網膜は、眼の奥に広がる薄い神経の膜で、眼に入った光を感じ取り、その情報を脳へ伝えることで「見る」ための大切な役割を担っています。その中でも、網膜の中心部にある「黄斑」は、文字を読んだり、人の顔を見分けたりするなど、細かいものを見るために特に重要な部分です。

網膜や黄斑には、加齢や糖尿病、血管の異常など、さまざまな原因によって病気が起こります。病気によって、ものがゆがんで見える、視野の一部が欠ける、急に見えにくくなるなど症状はさまざまで、自覚症状がほとんどないまま進行することもあります。

01|加齢黄斑変性(AMD)

加齢黄斑変性は、加齢などの影響によって、網膜の中心部にある「黄斑」が障害される病気です。黄斑は、文字を読んだり、人の顔を見分けたりするなど、細かいものを見分けるために重要な部分です。そのため、黄斑に異常が起こると、ものがゆがんで見える、視野の中心が暗く見える、中心部分がぼやけるなどの症状が現れます。

片眼だけに発症することもあり、もう一方の眼で見え方を補うため、初期には変化に気づきにくい場合があります。

加齢黄斑変性の眼底写真

加齢黄斑変性の種類

加齢黄斑変性は、大きく「新生血管型」と「萎縮型」の2つに分けられます。

新生血管型(以前は「滲出型」と呼ばれていたタイプ)
黄斑に「新生血管」と呼ばれる異常な血管が生じるタイプです。新生血管はもろく、血液や水分が漏れやすいため、黄斑にむくみや出血を起こし、視力低下につながります。比較的進行が速く、急に見えにくくなることもあります。

萎縮型
黄斑の組織が徐々に萎縮していくタイプです。一般的にはゆっくりと進行しますが、萎縮が黄斑の中心部に及ぶと、中心部分の見え方に影響します。

主な症状

特に、直線が波打って見える、文字や人の顔など、見ようとする中心部分が見えにくくなるのが特徴です。

治療

新生血管型の加齢黄斑変性では、抗VEGF薬を眼内に注射する治療が中心となります。新生血管の活動を抑えることで、黄斑に起こるむくみや出血を抑え、視力の維持・改善を目指します。

萎縮型の加齢黄斑変性では、補体(免疫反応にかかわるタンパク質)の働きを抑えるお薬を眼内に注射して進行を抑える治療が中心となります。黄斑にある細胞が弱っていくのを抑え、視力の維持を目指します。

→ 硝子体内注射について詳しく見る(コラム)

02|糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は、糖尿病による高血糖の状態が長く続くことで、網膜の細い血管が傷つき、出血や血流の悪化などが起こる病気です。

初期には自覚症状がほとんどなく、見え方に問題がなくても病気が進行していることがあります。進行すると網膜への血流が不足し、さらに悪化すると「新生血管」と呼ばれる異常な血管が生じます。

新生血管はもろく破れやすいため、眼の中に出血する硝子体出血を起こしたり、網膜が引っ張られて牽引性網膜剥離を起こしたりすることがあり、大きな視力低下につながる場合があります。

糖尿病網膜症の進行

糖尿病網膜症は、進行の程度によって大きく3つの段階に分けられます。初期から少しずつ網膜の血管に変化が起こり、進行するにつれて網膜の血流不足や新生血管などがみられるようになります。

糖尿病網膜症の進行(正常な網膜・単純・前増殖・増殖糖尿病網膜症)

糖尿病黄斑浮腫

糖尿病網膜症では、網膜の中心部にある「黄斑」の血管から水分などが漏れ、黄斑にむくみが生じる「糖尿病黄斑浮腫」を起こすことがあります。

糖尿病黄斑浮腫は、網膜症が進行してからだけではなく、比較的早い段階から起こることがあります。黄斑は細かいものを見るために重要な部分なので、むくみが生じると、ものがゆがんで見える、かすんで見える、視力が低下するなどの症状が現れます。

主な症状

治療

糖尿病網膜症の治療は、網膜症の進行度や糖尿病黄斑浮腫の有無などに合わせて選択します。

網膜光凝固術(レーザー治療)
網膜の血流が悪くなり、新生血管が生じるおそれが高くなった場合などに行う治療です。網膜にレーザーを照射することで新生血管の発生や活動を抑え、網膜症がさらに進行するのを防ぐことを目的とします。

抗VEGF薬の硝子体内注射
主に糖尿病黄斑浮腫に対して行います。黄斑のむくみに関係する「VEGF」という物質の働きを抑える薬を眼内に注射することで、黄斑のむくみを抑え、視力の維持・改善を目指します。

網膜硝子体手術
病気が進行し、硝子体出血や牽引性網膜剥離などを起こしている場合には、硝子体手術を行うことがあります。眼内の出血や網膜を引っ張っている組織などを取り除き、網膜の状態を整えて視機能を守ることを目指す手術です。

03|網膜静脈閉塞症(BRVO・CRVO)

網膜静脈閉塞症は、網膜の血液を心臓へ戻す静脈が詰まり、血液の流れが滞ることで、網膜に出血やむくみが起こる病気です。高血圧や動脈硬化などと関連があり、中高年に多くみられます。血管が詰まる場所によって、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)と網膜中心静脈閉塞症(CRVO)に分けられます。

出血する場所や範囲によって症状は異なりますが、網膜の中心にある「黄斑」にむくみ(黄斑浮腫)が生じると、ものがゆがんで見える、かすんで見える、視力が低下するなどの症状が現れます。

網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)

網膜静脈の枝の部分が詰まる病気です。詰まった血管が流れている範囲に出血やむくみが起こるため、網膜の一部分に変化が現れるのが特徴です。黄斑に影響が及ぶと視力が低下したり、ものがゆがんで見えたりします。また、閉塞した場所によっては、視野の一部が見えにくくなることもあります。

網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)の眼底写真

網膜中心静脈閉塞症(CRVO)

網膜から血液を集める網膜中心静脈が詰まる病気です。BRVOが網膜の一部分に起こるのに対して、CRVOでは網膜の広い範囲に血流の滞りが生じ、広範囲に出血やむくみがみられることがあります。黄斑浮腫による視力低下のほか、血流が大きく低下した場合には網膜が酸素不足となり、新生血管が生じることがあります。特に重症例では、眼圧が上昇する血管新生緑内障などの合併症にも注意が必要です。

網膜中心静脈閉塞症(CRVO)の眼底写真

黄斑浮腫

網膜静脈閉塞症で視力低下の大きな原因となるのが「黄斑浮腫」です。静脈が詰まると血液の流れが滞り、血管から水分などが漏れやすくなります。その水分が黄斑にたまることで網膜がむくみ、ものがゆがんで見える、かすんで見える、視力が低下するなどの症状が現れます。

主な症状

治療

網膜静脈閉塞症では、黄斑浮腫の程度や網膜の血流状態、新生血管の有無などを確認しながら治療方針を決めます。

抗VEGF薬の硝子体内注射
BRVO・CRVOによって黄斑にむくみが生じた場合には、抗VEGF薬の硝子体内注射を行います。抗VEGF薬には、血管から水分が漏れ出すのを抑える作用があり、黄斑のむくみを改善し、視力の維持・改善を目指します。

網膜光凝固術(レーザー治療)
網膜の血流が悪くなっている範囲が広い場合や、新生血管が生じる可能性がある場合などには、網膜光凝固術(レーザー治療)を行うことがあります。レーザーを網膜に照射することで、新生血管の発生やそれに伴う合併症を防ぐことを目的とします。

網膜硝子体手術
新生血管からの出血によって硝子体出血を起こした場合や、網膜剥離などを合併した場合には、硝子体手術が必要になることがあります。

04|黄斑前膜(ERM)

黄斑前膜は、網膜の中心にある「黄斑」の表面に薄い膜が形成される病気です。「網膜前膜」「黄斑上膜」と呼ばれることもあります。黄斑は、文字を読んだり細かいものを見たりするために重要な部分です。黄斑の表面にできた膜が徐々に収縮すると、網膜が引っ張られてしわやゆがみが生じ、ものがゆがんで見える、左右の眼で物の大きさが違って見える、視力が低下するなどの症状が現れます。

黄斑前膜のOCT画像

主な症状

治療

症状が軽く、日常生活への影響が少ない場合には、OCTなどで黄斑の状態を確認しながら経過観察を行います。

ゆがみや視力低下が進行し、読書や運転など日常生活に支障をきたす場合には、網膜硝子体手術を検討します。

05|黄斑円孔(MH)

黄斑円孔は、網膜の中心にある「黄斑」に小さな穴が開く病気です。眼の中を満たしている「硝子体」は、加齢とともに網膜から離れていきます。その過程で硝子体が黄斑に強く付着したまま引っ張ると、黄斑の中心に穴が開くことがあります。

黄斑円孔のOCT画像

主な症状

治療

ごく初期の小さな円孔では自然に閉鎖することもありますが、円孔が閉じない場合や、視力・見え方への影響がある場合には網膜硝子体手術を行います。

06|中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)

中心性漿液性脈絡網膜症は、網膜の中心にある「黄斑」の下に水分がたまり、網膜が部分的に浮き上がる病気です。網膜のさらに外側には「脈絡膜」という血管の豊富な組織があります。脈絡膜の血管の状態などが影響して水分が漏れ出し、網膜の下にたまることで黄斑の働きが低下し、見え方に異常が現れます。

30〜50歳代の男性に比較的多くみられ、ストレスやステロイド薬の使用などが発症に関係することがあります。多くは片眼に発症しますが、両眼にみられることもあります。

中心性漿液性脈絡網膜症のOCT画像

主な症状

治療

自然に水分が吸収され、数ヶ月程度で改善することも多いため、症状や網膜の状態によっては定期的に検査を行いながら経過観察します。一方で、症状が長く続く場合や再発を繰り返す場合、黄斑への影響が強い場合などには、病状に応じて網膜レーザーを検討します。

07|網膜裂孔

網膜裂孔は、網膜の一部に裂け目や穴ができた状態です。眼の中を満たしている「硝子体」は、加齢とともに変化し、次第に網膜から離れていきます。その際、硝子体と網膜の癒着が強い部分が引っ張られることで、網膜に裂け目ができることがあります。

裂孔ができても視力に影響しないことがありますが、裂孔から網膜の下に液体が入り込むと、網膜剥離へ進行することがあるため、早期発見が重要です。

主な症状

治療

網膜剥離を起こしていない網膜裂孔では、裂孔の状態に応じてレーザー治療を行います。裂孔の周囲にレーザーを照射し、網膜とその下の組織との癒着を強めることで、裂孔から液体が入り込み、網膜剥離へ進行するのを防ぐことを目的とした治療です。

08|網膜剥離

網膜剥離は、眼の奥にある網膜が、本来の位置から剥がれてしまう病気です。最も多い「裂孔原性網膜剥離」では、網膜にできた裂け目(網膜裂孔)から液体が網膜の下に入り込み、徐々に網膜が剥がれていきます。剥離した網膜は正常に働くことができなくなるため、剥離した範囲に応じて視野が欠けたり、視力が低下したりします。特に、網膜の中心にある「黄斑」まで剥離が及ぶと、視力に大きな影響を及ぼす可能性があります。

網膜剥離は放置すると剥離が広がることがあるため、早期の診断・治療が重要な疾患です。

主な症状

治療

すでに網膜剥離を起こしている場合には、剥離した網膜を元の位置に戻し、裂孔を閉鎖するための手術治療が必要となります。網膜剥離の範囲や裂孔の位置、硝子体の状態などを確認し、病状に応じて網膜硝子体手術や強膜バックリング手術などを選択します。

監修医師

宋 勇鍚

宋 勇鍚 SONG YOUNGSEOK

日本眼科学会認定眼科専門医。網膜硝子体手術・緑内障手術・白内障手術など、幅広い眼科手術に対応。専門性と豊富な手術経験を活かし、さまざまな眼疾患の治療に取り組んでいる。

早期発見・早期治療が予後を左右します

糖尿病をお持ちの方・健診で指摘された方・気になる症状がある方は、早めにご相談ください。