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流涙症・赤ちゃんの涙目

流涙

涙腺で分泌された涙は、目の表面を潤してから、涙道(鼻涙管)を通って鼻の中に流れます。涙道は細くなっている部位や曲がっている部位があり、様々な原因でその部位が閉塞することがあります。

通りが悪くなると、涙がたまってこぼれやすくなったり、目やにがでるのが続いたり、ひどくなると膿がたまって涙嚢炎をおこし痛くなって腫れるといった症状がでます。 涙道閉塞が長く続くと、炎症や化膿による癒着を生じ、閉塞部の治療が難しくなります。

流涙

赤ちゃんの涙目

新生児涙嚢炎

新生児涙嚢炎とは、生まれてから片目だけ涙が貯まる、メヤニが出る、などの症状が出ます。 抗生物質などの目薬をすると一時的にメヤニは治ったりするのですが、止めるとまたメヤニが出ます。2,3ヶ月して治らずに、産婦人科、小児科から紹介するケースも多いです。

上下涙点を通って鼻涙管から鼻へと流れていくのですが、鼻涙管がつまったままの状態だと、涙が流れていかず眼に貯まってしまうのです。そこにバイ菌が感染して炎症を起こすと、涙も貯まってメヤニも出るようになります。
治療法の考え方はさまざまです。

何もしないで自然に詰まっているところが通るようになるまで待つ。1才までにはほとんど治ってしまうという報告が多いです。

2,3才になっても治らねば、全身麻酔下で治療(涙道内視鏡治療など)を行う。待っても治らないこともあり、それまで涙目とメヤニが続きます。

涙嚢マッサージで様子を見る。これは適切に行えば効果的ですが、やり方を誤ると涙嚢が破れてしまって周りの組織に細菌が感染して炎症が広がってしまう(蜂窩織炎)ことがあります。 あまり強くしすぎないことが大切です。

しばらく待って治らねば針金で詰まっているところを通す(ブジー)。この時期についてもさまざまな考え方があり、首が据わってしまうと動いてやりにくくなるので1,2ヶ月でやる、涙道がある程度大きくなって首が据わった頃3,4ヶ月でやる、2,3才まで待って全身麻酔下で涙道内視鏡下でやる、など考え方は様々です。

当院では3ヶ月ほど待って治らない場合はブジーを検討しておりましたが、H23年専門家の勉強会では最近は自然に治るのを待つ、という方針を推進していました。1才までに大多数が治る可能性があること、ブジーにてうまくいかない場合、逆に自然開通しにくくなる、という理由です。そうはいってもメヤニや涙が続いている我が子をじっくり待つというのも辛いところだと思います。どうしても早く治したい、不安で仕方ないとお考えのお母さんもいらっしゃると思いますので、合併症のことも考慮して医師とよく話し合い治療方針を決定することが重要です。

現時点では、新生児涙嚢炎(赤ちゃんの涙目)の標準的治療方針というのは確立されておらず、医師の考え方で方針が異なるのが現状です。

ブジーについて

乳幼児の場合は涙道内視鏡が入らないため、手の感覚のみで行わなければならず、基本的には1回の治療で済ませたい治療です。何回もやってしまうと本来の涙道とは誤った「道」を作ってしまい、本来の涙道と区別が付かなくなるからです。

ブジーの時は赤ちゃんを押さえてからやりますので当然泣きます。
当院では、治療には保護者の方に同席して頂きます。実際に、鼻涙管が詰まってその袋(涙嚢)に膿がたまっていることを確認してもらい、実際に治療して詰まっていたところが通るようになるのも確認してもらいます。

治療現場を公開することには賛否両論あると思いますが、下記のように、治療自体は1分ほどですが、動く赤ちゃんを押さえて、タイミングよく治療を行う必要があるので時間がかかります。泣いている時間が長いため、実際に同席して頂くことでお母さんの心配を少しでも減らせるのではないかとの考えからそのようにしております。

合併症について

動いている赤ちゃんを押さえて治療をしますので時間を要します。1回のみの治療で終わらせたいのでタイミングを計る必要があります。治療がうまくいった場合は、再発することはまずありません。

まず一番起こりやすい合併症は、通常の鼻涙管と違うところにブジーが入っていってしまうことです。赤ちゃんの涙管は非常に弱いので簡単に破れてしまいます。ですが、手のわずかな感覚を頼りに慎重にたどっていけば、比較的閉塞部まで問題なく辿り着くことが多いです。通常と違う抵抗を感じたり、閉塞部の場所に確信が持てない場合は手術を中断し、時間をおいて後日改めて行うこととします。無理をしてしまうと、うまくいかなかった場合に治療が難しくなってしまうこともある為です。

まれな合併症として非常に重要なものは、治療により細菌が全身に回って敗血症という病気です。術後に発熱したりしたときはすぐに抗生剤の点滴等の治療を適切に行う必要があります。治療が遅れた場合、最悪の場合には死亡してしまうことさえあります。

本来は小児科がある総合病院での治療が適切と考え、一時は総合病院に全て紹介しておりましたが、当院での治療をご希望される方が多いため、H22年より再開致しました。

当院では、術直前からの抗生剤の内服、術前オゾン水、抗生剤による涙嚢洗浄、術後抗生剤洗浄、帰宅後の抗生剤の頻回点眼、内服を行い感染予防に努めております。また、それでも発熱等の症状が現れた場合は、夜間でも小児科に診察を依頼します。不安な場合は、総合病院での治療をお薦めします。

治療をお考えの方へ

新生児涙嚢炎は上記のようにさまざまな考え方があります。一番問題なのは、ごくまれな合併症である敗血症です。これに関しては眼科医の中でも広く知られているものではなく、敗血症の危険性の説明を受けずにブジーを行われることもあるようです。

しかし、涙道専門家との勉強会ではこの敗血症の話を時々耳にしますので、当院では上記の方針としております。上記のように一時は総合病院に全て紹介しておりましたが、当院での治療をご希望される方が多く、H22年より再開しております。よく相談の上、治療するか否かを決定されることをお薦めします。

治療スケジュール

  • 手術申し込み 保護者の方に来て頂いて説明し、ご希望の際は手術を申し込みます。
  • 当日、昼過ぎに行いますので、抗生剤を内服して受診して頂きます。
  • 看護師数人で赤ちゃんが動かないように固定し、保護者同席の上治療を行います。動かない赤ちゃんの場合は数分で終了しますが、激しく動いてしまう赤ちゃんの場合はタイミングを計りながら治療しますので全課程で30分ほどかかる場合もあります。
  • 治療後は点眼薬を1時間毎にしてもらい、内服薬も飲んでもらいます。
  • もし、帰宅後に発熱等の症状が現れた場合は院長直通の携帯番号をお渡ししますのでいつでもご連絡下さい。総合病院小児科へ連絡し診察を依頼します。 何もなければ次の日には涙目や目脂は治っています。点眼は1週間継続して頂き、1週間後に再発がなければ診察終了です。